大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 平成2年(オ)718号 判決 1990年9月27日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人南谷幸久、同南谷信子の上告理由について

離婚における財産分与として金銭の支払を命ずる裁判が確定し、その後に分与者が破産した場合において、右財産分与金の支払を目的とする債権は破産債権であって、分与の相手方は、右債権の履行を取戻権の行使として破産管財人に請求することはできないと解するのが相当である。けだし、離婚における財産分与は、分与者に属する財産を相手方へ給付するものであるから、金銭の支払を内容とする財産分与を命ずる裁判が確定したとしても、分与の相手方は当該金銭の支払を求める債権を取得するにすぎず、右債権の額に相当する金員が分与の相手方に当然帰属するものではないからである。

そうすると、右と同旨の見解に基づいて、上告人の破産管財人に対する財産分与金の支払請求を棄却した原審の判断は、正当として是認することができ、右判断に所論の違法はない。右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、ひっきょう、独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大内恒夫 裁判官 角田禮次郎 裁判官 四ッ谷巖 裁判官 大堀誠一 裁判官 橋元四郎平)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例